藤沢周平さんの『たそがれ清兵衛』を昨年映画化した時、前進座総出演で作られた山中貞雄監督の『人情紙風船』に学ぶべく、この傑作を繰り返し繰り返し見させてもらった。新三を颯爽と演じた翫右衛門の演技は、何べん見ても見飽きることがなかった。
　梅雀さんと圭史さんには、忙しい中を無理して京都撮影所にお出でいただき、大事な役を演じてもらったが、ぼくには前進座へのオマージュのつもりでもあったのだ。
　その前進座の『髪結新三』を、今度通しで見ることができる。なんという楽しみであることだろうか。